使用期限が切れたマスタングペーストを使うとどうなる?【実験】

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みなさんこんにちは、おゆです。

いきなりですが『マスタングペースト』ってご存知でしょうか。
レザー好きの方なら聞いたことがある方も多いと思いますが、天然皮革用のメンテナンスオイルです。

このマスタングペーストって、使いやすく保湿力が高い一方で使用期限が非常に短いというデメリットを抱えています。今回はこのマスタングペーストの使用期限について、実験をしながら深掘りしていこうという内容です。

目次

マスタングペーストは天然由来の保革オイル

出典:http://www.captstyle.com

まずはマスタングペーストの説明から軽く触れておきます。

マスタングペーストはその名の通りホース(馬)の油です。従来のロウや石油ベースのポリッシュとは異なり、天然成分だけを使用した100%のピュアホースオイルです。

オーガニック素材で手指・肌にも優しく、素手で扱ってもトラブルは起こりにくいものです。
非常に伸びが良いので作業性がいいのも魅力ですね。さっと塗ることができます。

コードバンにも対応するほどの圧倒的な浸透力

100%のピュアホースオイルは非常に高い浸透力を持ちます。人体用にも馬油の製品って多数存在していますよね。

従来の保湿オイルでは効果が薄いようなコードバンにも浸透させることが可能で、表面のハードなレザーにも使用することができるという圧倒的な浸透力を持っています。

皮革に最も適した栄養を与えることで、乾燥や水分からレザーを守る役割が期待できます。

100%天然由来の成分→ゆえに使用期限が1年と短い

しかしこの天然由来100%という成分にはもちろん弱点があります。添加物を一切含まないので使用期限が非常に短いです。

未開封の状態であれば3年程度持ちますが、開封した場合は1年で使い切ることが推奨されています。
1パッケージでレザージャケット20着分の容量ですから、まあ使い切れないんですよ。

年に2回のメンテナンスをするにしたって10着も革ジャンが無いといけないわけですからね。なかなかそんなに持っている人っていないですよね。

しかも値段もそこそこするので捨てちゃうのはもったいないです。

使用期限について権威性のある研究結果や論文は無い

僕が気になったのはこの使用期限について、言及している研究資料などが見つからなかったことです。
おばあちゃんの知恵袋的に『使わないほうがいい』とは言われているものの、それが研究されているわけでは無いんですよね。
あくまで実務的な経験に基づくもので、使用期限の切れたものは使用しない方がいいと言われているみたいです。

そもそも生きた細胞では無いレザーに古い油を塗ったからって問題あるの?

個人的に最も引っかかっている点がこちらです。
そもそも生きた細胞でないのであれば、多少の外的要因で組成が変化したりしないのではないでしょうか?

唯一あり得るとすれば鞣しの工程で使用する薬剤などに酸化油が反応する可能性ですが、酸化した油は不安定な物質を多く含むためこの可能性は否定できない気がします。

よく言われる使用してはいけない理由と疑問点

悪臭が染み付く

酸化防止剤を含んでいないマスタングペーストは、開けるとものすごいスピードで酸化していきます。酸化した油というのは悪臭を放つので(お父さんの匂いですね)、この匂いが染み付いてしまうリスクがあります。

とは言われるものの、個人的な今までの経験でレザー製品に匂い移りしたことってありません。この点に関しては検証の余地がありそうと考えています。

ベタつきや変色、皮革繊維の劣化

酸化が進んだ油の分子構造は変化しています。酸化物や過酸化脂質が分子構造中に多く存在するようになります。これが匂いの変化にも関係しているわけですが、この酸化した油の分子構造がタンニンや仕上げ剤と化学反応を起こすことで変色やベタつき、革繊維を傷める原因になると言われています。

これは非常にそれっぽい理屈ですね。ただしこれって『それっぽい』だけで実は根拠に乏しい推論に過ぎないんですよね。この化学反応式であったり、仕上げ剤とどう反応するのか調べてみてもそこまでの情報は出てきません。つまりこういうふうに想定されるよ、っていうだけで確実に化学反応を起こすことがわかっているわけでは無いんですよね。

雑菌やカビ繁殖のリスク

酸化した油は雑菌繁殖のリスクがあります。ましてやマスタングペーストには保存料や防カビ剤なんかも一切含まれっていないわけですから、これらのリスクが高まる懸念があります。

これに関してはおそらく本当にそうだと思います。保存料不使用ですから、経年で雑菌は繁殖するでしょうね。一方でそれなら実は新品でもそれなりにリスクはあるのでは?と思っています。保存料は偉大です。

酸化した油含まれる物質と有害性について

これらを検証する上で重要になりそうな、酸化油に含まれる物質を確認しておきましょう。

物質安定性特徴
ヒドロペルオキシド× 非常に不安定分解しやすく、さらなる酸化作用がある
アルデヒド△ 中程度揮発性が高くニオイの原因に
マロンジアルデヒド△ 中程度生体と反応しやすい
短鎖カルボン酸◎ 安定

馬油含まれるオレイン酸やリノレン酸といった不飽和脂肪酸の酸化の初期反応で発生するヒドロペルオキシドは、フリーラジカルを発生させることでさらなる酸化反応を誘発します。

アルデヒドなど有害な物質を産生したのち、最終段階では短鎖カルボン酸(酢酸)などの安定した物質へと変化していく流れです。ここまでくると非常に安定した物質になるので有害性は少なくなります。

というわけで実際にやってみよう

こればかりはやってみないとわかりません。調べてばかりだと『使っちゃだめ』っていう結論しか得られませんからね。お察しの通り僕は案外いけるんじゃないか?と思っているわけです。

実験内容

使用期限の切れたマスタングペーストと新品のマスタングペーストを用意し、それぞれレザー製品に塗布して経過を観察します。

左側に使用期限が切れたマスタングペースト、右側に新品のマスタングペーストが写っている

実験で使用するレザー製品は、UNUSEDのレザーベストとJalan Sriwijayaのシューズです。UNUSEDはタンナーの情報が出ていないので詳細不明ですが、非常に繊細でキメの細かい上質なレザーです。Jalan Sriwijayaは『デュプイ社』のカーフスキンです。どちらもこんな実験で使ったら怒られるくらいの上質な革ですね。すみません。

今回実験に使用する『UNUSED(ブランド)』のレザーベスト。非常に上質な革が使われている。
UNUSEDのベスト。かっこいい。
今回実験に使う『Jalan Sriwijaya(ブランド)』のシューズ。非常に上質なレザーが使われている。
Jalan Sriwijayaです。7〜8年くらい履いています。

実践

表面の汚れを落とした後にマスタングペーストのみを塗布します。その他ポリッシュや防水スプレーなどは使用しません。

まずはベストから。

新品のマスタングペーストを開けて、指で取る様子。
新品のマスタングペーストです。
指先に少しオイルがついている様子。少しの量のオイルで十分塗り広げることができることが分かる。
これくらいの量で背中半分くらいは塗れます。伸びがいい。
指でオイルを塗り広げる様子。
指で馴染ませていきます。
ベストの左半身にオイルが塗ってある様子。うっすら光沢がある。
左半身に塗ってあります。わかりにくいですがうっすら光沢が出るくらいで十分です。

右半身に使用期限切れ、左半身に新品のマスタングペーストを塗布し、このまま経過観察していきます。

レザーベストの右半身に使用期限切れのマスタングペースト、左半身に新品のマスタングペーストを塗ったことが分かる写真。

続いてシューズにも塗布していきます。
塗り方は全く同じです。シューズの方が少量で済むので塗り過ぎに注意が必要なくらいですね。

こちらも右が期限切れ、左が新品。

レザーシューズの右足に使用期限切れのマスタングペースト、左足に新品のマスタングペーストを塗ったことが分かる写真。

現時点で匂いはきつい

この時点でまずはっきりしたことが、酸化臭がものすごくキツいということですね。

期限が切れたマスタングペーストからはものすごいお父さんの匂いがします。
塗りひろげるとそこまで気になりませんが、シューズはまだしも革ジャンなんかの大きな面積に塗るとものすごく異臭を放つかもしれません。

古いマスタングペーストの写真。酸化してやや黄色味を帯びている。
期限切れのマスタングペースト

1ヶ月おきに3回塗布

そして今回はより成果がはっきり分かるように、1ヶ月おきの超高頻度での塗り直しを実施しました。

通常半年に1回くらいのメンテナンスで十分と考えられていますが、この周期だと確実に問題が起こらなそうなので無理やり多く塗っているイメージです。

結果|少し余った分を使い切るくらいなら問題無い

結果です。結論から言うとこの数ヶ月の実験では問題は全く見られませんでした。

変色・匂い移り・カビ 全く発生していない

先述した懸念される問題は全く発生していません。
なんなら今回はなんらかの変化が欲しかったので通常のペースよりも多く塗ったにも関わらず、目立った変化は何もありませんでした。

実験3ヶ月後のレザーベスト。実験開始前と全く変化がない。

こちらが実験後のベストです。最初の写真と全く差がありません。同じ写真じゃ無いですよ。

実験3ヶ月後のレザーシューズ。実験前と全く変化が無い。

シューズも同じく全く変化なし。カビもありません。

そもそも塗った後の油がものすごい勢いで酸化するから言い出したらキリがない

これ、考えてみれば当たり前なんですよ。
そもそも酸化油がレザーにダメージを与えるのであれば、酸化しやすいホースオイルを塗り込むこと自体が間違っていることになります。保存容器から出した瞬間から酸化し始めていますし、レザージャケットのような表面積の広い物に薄く塗り広げたらどうなるでしょうか。

レザー表面でものすごい勢いで酸化していきますよね。

それでも問題って起きないじゃ無いですか。大丈夫なんですよ、多少の酸化くらいは。

レザーって確かに現代の化学繊維なんかと比べるとデリケートですけど、それでも長らく靴とか外套に使われてきた素材ですからね。外で使えるような頑丈な素材なんですよ。

たかが酸化油くらいでいちいち変性してしまうような素材ではないので、安心して使って貰えばいいと思います。

使用後はしっかり手洗う・頻繁な使用は避けるのが無難

一方で注意点があることも事実です。酸化した油に含まれるヒドロペルオキシドはアレルゲンとして知られています。敏感肌の方はもちろん、そうでは無い方でも継続的に肌に触れ続けることでアレルギー発症のリスクがあります。

酸化していないマスタングペーストは肌にほとんど害が無いお伝えしましたが、使用期限の切れたものを使用する場合は使用後にしっかりと手を洗うように気をつけて下さい。また長期的な酸化油刺激で肌荒れを起こすリスクも否定できないので、高頻度での使用は避けて半年に1回程度の使用に留めておくのが無難でしょう。

あとやっぱり酸化臭がきついので換気も忘れずにね。

まとめ|若干ビジネス的要素あり。使っても大丈夫よ。

こうして確認してみると、マスタングペーストの使用期限の短さはある程度ビジネスの側面が強いように思います。通常のポリッシュや保存料・酸化防止剤添加のオイルは、長く使えるため買い替えのサイクルが長期化しがちです。

それでは商売になりませんよね。
マスタングペーストを販売しているCAPT.STYLEは、馬油関連のオイル・クリームを数種類販売しているだけの非常にニッチな会社です。あえて保存料不使用にすることで、付加価値をつけた上でさらに販売サイクルも早くしてもらう、という作戦が全く無いとは言えないですよね。

マスタングペースト大好きです。本当に使いやすいですし、僕は応援しているので購入し続けます。一方で使用期限が少し過ぎているものだからと言ってすぐに捨ててしまう必要はないので、無駄なゴミを増やさないためにもしっかりと使い切る意識も持って欲しいと思います!

みんさんもマスタングペーストを使って、最高のレザーライフを楽しんでください!

今日は以上です!
ありがとうございました!

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この記事を書いた人

身長163cmのアラサー。
ファッション業界で会社員をしながら趣味でブログを書いています。

服と車が大好きな典型的な見栄っ張りが、ミニマルに生活する様子を発信していきます。

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